日本/海外の境界を越えて、最前線で音楽を鳴らすために

ーそういう経験の差みたいなものを痛感したんだね。ダイレクトに。
 
菊地:でも一方で、あんまり変わらないなって思った部分もあって…。
 
秋山:同じ人間だなって思えたんですよね。同世代だし、影響を受けてきた音楽も一緒だし。
 
菊地:DYGLの音楽性や、それこそアッキーともすごく似てる感覚がやっぱりあって、変わらないんだなって思えたんですよね。もうそういう時代が来たんだと。本当にビビらないで、冷静にやったら、全然行けるなと。
 
秋山:いつか成功しようと思ってもそのいつかっていつなんだって話だし、The Orwellsに関して言えばまだ10代やそこらなわけだし、日本人でも別にもう遠慮する必要なんてないんですよ。日本人って完璧にしてから動こうとしちゃう人多いですけど、もうやりたいことあるならとりあえずやってみるべきです。日本でもできる事はたくさんありますし、海外だって今は航空券の値下がりやインターネットの影響で物理的にも感覚的にも近くなっていますから、興味があってそれが海外でしかなしえないことなら海外に行くべきです。もし今どうしてもやりたいがあるなら、それはもう行動に移していい時なんですよ。
 
GloomyやBatman Winksといったいわゆる…こういう言い方ももう古いですが、海外テイストのバンド、「CONDOMINIMUM」といった若手の新しいメディア、それこそ大学の先輩で写真家の松藤美里さんや池野詩織さん、きくりんさんと一緒にアメリカに滞在していた吉川周作さんなど、いい感覚をもった日本人は確かにいます。
 
彼らの作品は今後日本に限らず多くの国の人が認めてくれるでしょう。勿論、ガラパゴス化した日本のポピュラー文化にも面白さを見いだせるかもしれません。ただ僕らに関して言えば、こちらのシーンにいても、どうしても違和感みたいなものがあって。これまでずっと海外の音楽に育てられていますから、向こうで活動する事の方がむしろ自然なことの様に感じています。

菊地:日本のシーンにとってもいいことだと思いますね。むしろそれは絶対に僕らの世代でやるべきっていうか。もちろん、自分たちのためでもあるんだけど、僕は一音楽ファンとしてもそうだし、一ライター的な視点からもそういうバンドはどんどん出て行って欲しい気持ちがあります。
 
今思い返せば、アッキーにマネージャーの話を振られたとき、自分にはこのやり方のほうが合うって思ったんですよね。たぶん自分はバンド側の人間だから。
 
秋山:そんな直感があったんですか。
 
菊地:あった。すごいあった。だから、The Orwellsと会ったときも、僕だけがThe Orwellsに会っているのと、アッキーがいてThe Orwellsに会えたのだと、たぶん自分が感じていることもたぶんすごい変わったと思う。アッキーを介しているからこそ、彼らの考えとか発言に発見があった。
 
秋山:比較がしやすくなったということなんですかね。バンドマン同士で。
 
菊地:それもそうだし。僕が1人だったら、彼らも彼らで、ジャーナリストっていう視点でしか話をしてくれなかったと思うし、アッキーがいたからこそ「シカゴのシーンはこうでこういうバンドがいるんだよ」とか語ってくれたと思う。多分、俺は1人でも全然それは聞いていたと思うんだけど、たぶんテンションが違ったと思う。視界のなかで、アッキーがThe Orwellsのメンバーと話しているというのはすごく新鮮だったな。
 
『Just Say It Tonight/DYGL』

秋山:そうですね。高校生のときには全く想像できない状況だったんで、刺激的でしたね。世界でライブしている人達と飯喰いながらシーンの話をするなんていうのは。
 
菊地:それを受けて僕らには何ができるんだっていうのをもう一度考えていきたいですね。
 
秋山:きくりんさんは3月に海外にまた行くみたいなことを考えているって言ってたんで、これはもしかしたら本当にもう運命なんじゃないかなと。それこそ日本にいて一緒にマネージャーとしてやった上で、きくりんさんも海外行くなら「そのまま俺らも海外行っちゃえばいいんじゃね?」って思っている部分もあります。また実際に来年になったらどうなるかわからないんですけど、でもそこの、いま見えている地点があるなら取りあえずそこに向かって進むことができるんじゃないかって思って、僕らは海外をビジョンにいま進んでいるつもりなんですけど。まあ貯金のこととか考えたりするとしんどいんですけど(笑)
 
菊地:アッキーはしかもYkikiでもうまく回り始めているわけで、だからそれはやっぱりどんどんどんどん更新されていくことだから、自分の考えも一応更新していかないとね。
 
秋山:確かにそれはそうですね。
 
菊地:自分が今DYGLでやらきゃいけないなって思っているのは、向こうでのブッキングのお手伝いですね。僕は日本でイベントを企画したことがあるんですけど、向こうでどういう感じで回るのかっていうのを1回試した上で、それが結構自分の中で楽だったら、DYGLが行くタイミングで再びブッキングをしてみたいですね。日本からでも。The Orwellsじゃないですけど、同じ熱量でやっている同世代とブッキングしたいっていうのはあるかな。個人的にもDYGLと海外のバンドがアメリカで対バンしているのは観てみたいです。
 
ーひとまず、また2人には1年後、ここからどう変わったか、話を聞いてみたいな。
 
秋山:どうなっているのかなぁ。全く想像もつかない。アメリカからのインタビューになっていたらいいですけどね。(笑)
 
菊地:まあ難しく考えないで、直感でどんどん自分の価値観を更新していけたらいいですね。

後日談:取材をさせてもらったのが、2014年の9月の終わり。それから4カ月が経って、彼らの状況は既に更新されている。Ykiki Beatが12月のThe Drumsのオープニングアクトを担当したり、DYGLはメンバーの脱退などもあった。話によると、“きくりん”はYkiki Beatのマネージメントも始めたらしいし、絶賛レコーディング中という情報も得た。爆速で進む2015年の彼らの背中をきちんと追いかけたい。

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